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執筆者の写真池田卓夫 Takuo Ikeda

桐山建史・ジャルスキー・メジューエワ

クラシックディスク・今月の3点(2024年12月)


お正月にゆっくりと味わえる音楽

「忘れられた宝石~17-18世紀イタリアのヴァイオリン音楽」

桐山建志(ヴァイオリン)、平井み帆(チェンバロ)

1. ビアージョ・マリーニ:ソナタ第4番 Op.8-59 (1626)

2. マルコ・ウッチェリーニ:ソナタ第1番 Op.5-1 (1649)

3. ジョヴァンニ・ブオノヴェントゥーラ・ヴィヴィアーニ:イントロドゥツィオーネ第1番 Op.4-13 (1678)

4. アレッサンドロ・ストラデッラ:シンフォニア第3番 (Year Unk.)

5. カルロ・アンブロジオ・ロナーティ:ソナタ第1番 (1701)

6. アルカンジェロ・コレッリ:ソナタ第1番 Op.5-1 (1700)

7. フランチェスコ・ジェミニアーニ:ソナタ第6番 (1739)

8. ピエトロ・アントニオ・ロカテッリ:ソナタ DunL 5.9 (Year Unk.)

9. ガエターノ・ブルネッティ:ソナタ第11番 L.51 (1781-83)


1620〜1780年代に書かれたイタリアのヴァイオリン音楽を時系列で並べ、沢辺稔が1991年に製作した1740年グヮルネリウス・モデルを桐山はA-415Hzのピッチで演奏。チェンバロの平井は野神俊哉が2003年に製作したイタリアン・モデルを使用している。2024年8月2〜4日、神奈川県立相模湖交流センターでセッション録音。


マリーニの再生が始まってすぐ、東京の自室が懐かしいイタリアの青空と陽光、空気で満たされるような錯覚を覚えた。輝かしい国の輝かしい音楽の歴史。時代が下るとともに、チェンバロの果たす役割も積極的となり、素晴らしい演奏を楽しみながら音楽史の展開や楽器奏法の変遷も実感できる優れた演奏に感心する。

(ALM=コジマ録音)


「アヴェ・マリア〜シューベルト歌曲集」

フィリップ・ジャルスキー(カウンターテナー)、ジェローム・デュクロ(ピアノ)

「万霊節のための連祷」「秋」「 君はわが憩い」「再会」「漁夫の愛の幸せ」「ます」「春に」「ミニョンの歌『ただあこがれを知る者だけが』 」「音楽に寄せて」「ギリシャの神々」「ミューズの子」「最初の喪失」「夕映えに」「シルヴィアに」「夜と夢」「星」 「夕星」 「アヴェ・マリア 」「夜の曲」

日本盤ボーナストラック:歌曲集「白鳥の歌」より「セレナード」


カウンターテナーが歌うリート(ドイツ語歌曲)のディスクは過去にも存在したが、どこかヒステリックなエキセントリシティーが残っていたり、人工美の冷ややかさを感じさせたりした。ジャルスキーはフランス人ながら実に丁寧かつニュアンス豊かにドイツ語をさばき、温かみを帯びた声でシューベルトの世界をごくごく、身近な距離から再現する。ピアノのデュクロは作曲家でもあり、ジャルスキーとの共演アルバムは3作目。出過ぎず引っ込み過ぎず、絶妙の空気感でリート・デュオの奥行きを構築している。2020年2月14〜17日、ブーローニュ=ビヤンクールRiffXスタジオでセッション録音。

(ワーナーミュージック)


ショパン「ワルツ集(18曲)」&「3つのエコセーズ(作品72の3)」

イリーナ・メジューエワ(ピアノ)


メジューエワが取り組む2度目のショパン・シリーズ。「ワルツ集」は2015年以来9年ぶりの再録音。作曲家生前に出版された8曲を作品番号順に、残り10曲(遺作)を自由に配列、最後に「3つのエコセーズ」をアンコールのように置いた。ピアノは日本ピアノサービス株式会社が修復&所有する1925年製ニューヨーク・スタインウェイ「CD135」。2024年3月と6月に富山県魚津市の新川文化ホールに持ち込み、セッション録音を行った。


《華麗なる円舞曲》の標題がついているナンバーでも過美に陥らず、作品の構造をしっかりと見据え、深いところから内実のある響きと音楽を立ち上らせる手腕は見事の一語に尽き、他に類例のない香りと気品を漂わせる。休日に自宅でじっくり、聴き古されたと思い込んでいた超名曲と改めて向き合い、得られる発見の「最大限(max)」がここには存在する。

(BIJIN CLASSICAL=発売:日本ピアノサービス)


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