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執筆者の写真池田卓夫 Takuo Ikeda

パリから帰国したら、日本の若手がフランス音楽を奏でていた!


2019年7月11日。午後1時にパリからのエールフランス便が羽田に着陸、2時半に帰宅した。午後7時、銀幕の王子ホールで聴いた帰国後最初の演奏会はホール向かい側にあるという音楽サロン「コンチェルティーナ」の5周年を記念し、30歳前後の若い演奏家7人を集めた「フランス室内楽の夕べ」。ハンガリー国立歌劇場コンサートマスターの長尾春花とピアノの實川風が女性作曲家ヴィアルドの「6つの小品」抜粋、ミュンヘン在住のヴァイオリニスト鈴木舞とベルリン在住のピアニスト齊藤一也がルクーの「ヴァイオリン・ソナタ」第3楽章、鈴木と長尾がイザイの「2台のヴァイオリンのためのソナタ」第1楽章、實川と高橋ドレミのピアノ4手連弾がドビュッシーの「6つの古代のエピグラフ」、實川、長尾、鈴木にヴィオラの田原綾子、葵トリオのチェロでもある伊東裕を加えた5人がフランクの「ピアノ五重奏曲」と、ガラにしてはかなりハイブローな選曲だ。しかもヴィアルドとイザイ、フランクは相互に関係したベルギーの作曲家である。


全員が内外のコンクールで上位入賞、国外でも着実に演奏活動を繰り広げる若手一線の名手たち。人気や技に溺れることなく、集客の難しい室内楽、しかも客受けしない渋い作品に挑むだけでもあっぱれながら、テンション高く息の合った演奏で客席を熱狂させたのは見事だった。實川と高橋の4手連弾を除けば、普段から室内楽の共演を積み重ねているチームではないので、どうしても「ソリストのぶつかり合い」的な要素が残ってしまうが、ガラコンサートという設定に照らせば、何の問題もない。むしろ過度のソリスト意識を慎み、作品ごとに最適のアンサンブルを実現しようと力を合わせた彼らのインテリジェンスに日本楽壇の成熟と、確かな未来をみた。


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